"オズOZの魔法使い"は、1902年のミュージカル、1939年の映画として生まれた、アメリカ文学の代表作であり、世界中で翻訳され、愛され続けている物語です。娘が小さい頃は、『不思議な国のアリス』『メリーポピンズ』と並び、『オズの魔法使い』のお話を、絵本や、ビデオで何回も話してきかせ、一緒に楽しんだものでした。
ドロシーはアメリカの田舎町カンザスの農家に住む女の子、愛犬トトとエムおばさん、ヘンリーおじさんと暮らしています。ある日、ハリケーンが農場を襲い、ドロシーは愛犬トトと一緒に、家を丸ごと吹き飛ばされ、気がつくと、不思議な国オズのマンチキンという街にいました。エムおばさん、ヘンリーおじさんの元へ帰るために、無事に避難したのでした。
そこへ、シャボン玉に乗った"北の良い魔女"が現れ、"東の悪い魔女"が履いていたルビーの靴をドロシーに与え、エメラルドの王、国オズOZに行って、偉大な魔法使いオズに会い、故郷のカンザスに返してもらう様に提案されます。ドロシーは、エムおばさん、ヘンリーおじさんの元へ帰るために、愛犬トトと魔法使いオズの住むエメラルド城に向かうべく旅に出るのでした。しかし、この旅は、大変危険で困難なものでした。"死んだ東の悪い魔女"の妹である"西の悪い魔女"が遺品であるルビーの靴を取り戻すため、ドロシーに襲いかかるのでした。
この物語は、旅の途中に会う"カカシ""木こりのブリキ""ライオン"の3人の自分再生の物語でもあります。
これは、『知恵』『心』『勇気』それぞれが、3人にとって欠けていて、最も必要とするものを勝ち取る旅でした。さて、果たしてドロシー、カカシ、ブリキ、ライオンはオズに会って、願いが叶えられるでしょうか!? というお話です。
先日、公開中の映画『WICKED(二人の魔女)』観てきました。もちろん、前日には映画『オズの魔法使い』『WICKED(二人の魔女)』を予習しました。オズの魔法使いは以前見た時から、20年以上経っていますので、新鮮でした。1939年の作品ですから、始まりからオズの世界に行くまでは、モノクロですし、家がハリケーンで吹き飛ばされるシーンは、日本の特撮、怪獣映画を彷彿させる映像でニッコリしてしまいました。
『ウィキッド』は、"西の悪い魔女"と"南の良い魔女"の物語です。オズの魔法使いのドロシーは、後半にちょっとだけ出てきますが、主役は2人の魔女のエルファバとグリンダです。『ウィキッド』はオズの魔法使いとは全く違う、見方を変えた物語になっています。同じ話を描いた映画でも、視点が変わると、これまで思っていた人物像も全くひっくり返って見えるので、それが大変面白く感じました。この映画では、人によって、いろんな事を感じ、思うところがあるかと思います。
私は、今回、映画を見て、特に"善と悪"の不確かさについて深く考えさせられました。『オズの魔法使い』では一方的な「絶対悪」として描かれていた西の魔女エルファバですが、本作の視点からは、肌の色が緑であるために不当な差別を受けながらも、動物を排除しようとする理不尽な世界に抗う「信念の人」として描かれています。
この映画は、勝者の歴史や多数派(マジョリティ)の視点から語られる「善」が、別の立場から見ればいかに残酷な「悪」になり得るかということを、私に語りかけます。
現実に目を移せば、世界情勢は混沌としており、大きな戦争が起きています。人種、民族、宗教、経済システム、文化などあらゆるものが違う中で、それぞれの価値観や理解、判断がせめぎ合い、戦いを生んでいます。恐ろしいのは、争い合う双方が「自分たちこそが善(正義)である」と信じている点です。絶対的な"善か悪"を信じたい気持ちもありますが、時代の流れや立場の違いによって、正義の形は変移してしまいます。
だからこそ、他者を「悪」と決めつける前に、自分の信じている"善と悪"を疑ってみる謙虚さが必要なのだと思います。
また、現代社会の「善と悪」に対する不寛容さについても考えさせられました。現代の社会における"善と悪"は、昭和の時代にあった「これぐらいは良いんじゃない」というグレーな部分が公的には絶対に認められなくなっています。
もちろんそれは正しい進化の流れでありえますが、過度な「正しさ(善)」の追求は、少しでも枠からはみ出した者を「悪」として徹底的に叩く構造を生み、結果として息苦しい社会を作っているように感じます。
南の良い魔女グリンダは、「良い人」を代表しなければいけない重圧を背負いながらも、同時に「悪い人」という烙印を押されたエルファバの心情を深く理解していました。このグリンダの複雑な葛藤こそが、今の私たちに必要な姿勢ではないかと思うのです。「善か悪か」で世界を単純に二分するのではなく、自分と異なる背景を持つ他者の痛みに寄り添い、白黒付けられない複雑さを抱え込む想像力。それこそが、分断された現代社会を少しでも温かいものにするヒントなのだと、この映画は教えてくれている気がします。
また、西の魔女の肌の色が緑な為、差別を受けたり、動物を排除する世界を作ろうとする事は、ルッキズム、動物愛護、人種差別、移民問題など様々な問題に思いを広げた方も多かった映画だったのではと思います。
この機会に、小さいお子さんのお持ちの方には、是非とも原作『オズの魔法使い』のお話を聞かせてあげたらとお勧めします。
2026年4月 院長 金子